ビジネス:仕事に困らない鉄の資格
2012年 10月 16日
「とんがったプロ」になれる8つの新しい分野とは
これから資格取得に取り組むうえでの基本的な考え方として、笠木恵司氏はほかの人にはできないことができる「『とんがった』プロ人材を目指せ」と言う。資格の世界でも、未開拓の「ブルーオーシャン」を目指せというわけだ。
「多少とんがっていないと、外にでたときに使いものになりません。企業もこれまでは『こいつは協調心が強い。先輩に逆らわないだろう』という採用の仕方をしてきましたが、組織がそんな人間ばかりになったら、誰が新しいビジネスを引っ張ります? 資格はその人が持つプロフェッショナル性を見定めるための看板であるべきです」(笠木氏)
もう一つ、資格取得の基本的な考え方として押さえておくべきなのが、「自分の技能を高度化するか、横に広げるか」(笠木氏)という方向性の設定である。
高度化とはある分野のスペシャリストを目指すということであり、横に広げるとは管理者、プロ経営者を目指すということである。例えば経理部門に従事している人が簿記3級を取得した後、さらに簿記1級、税理士、公認会計士を目指していくのか。それとも人事労務の仕事も理解したいので社会保険労務士の取得を目指していくのか、といった違いである。
それでは今後、有望になるのはどんな分野だろうか。笠木氏は「『とんがった』プロ人材になれる新しい分野」として、次の8分野を挙げている。
1)政策創造・経営戦略立案
2)組織&システムデザイン・マネジメント
3)環境経済・環境経営
4)ファイナンス&国際会計基準(IFRS)
5)知的財産管理・国際標準
6)CSR(企業の社会的責任)
7)国際関係
8)人間関係スキル
これらの分野は、その道のプロがまだ多く存在しない、新しい領域である。
例えば、社会的責任を意識した企業経営がますます求められる潮流の中で、「CSRができます」という人材はまだ少ない。ならば、その領域は自分がプロの人材として先駆者になれるチャンスがあるということだ。
「50代になった管理職には、新しい分野が苦手な人が多い。若手や中堅のビジネスマンは、そうした分野のプロになるべきです」(笠木氏)
ただ上記の8分野を眺めてみると、必ずしもそれぞれのテーマとぴったり対応した資格が存在するわけではない。それは、新しく生まれた需要に資格の創設が追いついていないからといえよう。逆に、これまで世の中に必要があって存在した資格でも、需要がなくなって衰退していくものも出てくるだろう。
どの資格取得にチャレンジするかを検討する際には、そうした見極めを行い、どうすれば自分を活かせるかを考えることが必要である。
「PMP」はミドル層に最も必要な資格の一つ
前回、笠木恵司氏が挙げた8分野のうち、将来、経営幹部を目指すミドルマネジメント層に求められる力の一つが「組織&システムデザイン・マネジメント」である。
とりわけ現在はビジネスが複雑化、高度化する中で、所属する組織や立場の異なる人間でチームを編成し、成功に導いていくスキルの必要性が高まっている。その能力を身につけるために有効なのが、プロジェクトマネジメントに関する資格の取得だ。
現在、米国の非営利団体PMI(Project Management Institute)が認定しグローバル標準とされるPMP(Project Managem ent Professional)と、日本プロジェクトマネジメント協会のP2M試験がある。ITや建設、エンジニアリングをはじめ、多くの業界に取得者がいる。
日本IBMの鬼束孝則シニアプロジェクトマネージャー(41歳)は2005年にPMPを取得し、業務で活用するとともにキャリアの発展に活かしている。
「PMPを取得しようと考えた理由は2つあります。一つは、会社がPMP取得を奨励していること。もう一つは、担当していたプロジェクトで行き詰まったからです」(鬼束氏)
プロジェクトに参加している人間は考え方も目指す方向もまちまちで、必ずしも思った通りには動いてくれない。そのような状況では声の大きい人間の意見が通りがちになり、往々にしてプロジェクトは立ち往生してしまう。
ところがPMPが準拠しているプロジェクトマネジメントに関する知識体系である「PMBOK」(Project Management Body of Knowledge)にはどの時点で何をインプットし、アウトプットするべきかの標準が示されており、PMPを取得すればプロジェクトの各局面で何を意識し、どうするのが正しいかという判断を示すことができる。
つまり、プロジェクトが混乱し立ち往生しそうな場面でも、PMPを取得していれば我流ではない標準的な判断を提示し、メンバーを納得させたうえで軌道修正を図れるわけだ。
「今でもプロジェクトで困ったときはPMBOKに目を通します。私にとっては保険であり、お守りのようなものです。PMPを取得して名刺に印刷しているお客様やビジネスパートナーの方と出会うと、非常に盛り上がりますね。この資格を持っているとお互いに『標準の知識を持っている本物のプロジェクトマネージャー』と認識できるのです」(鬼束氏)
鬼束氏がPMP取得のために費やした勉強時間は120時間。現在は社内インフラ標準化プロジェクトのプロジェクトリーダーという重要なポジションで活躍している。
さらに会社の業務だけでなく、鬼束氏はボランティアとしてPMI日本支部のセミナー委員会で企画運営に携わっている。このボランティア活動を通じて形成された業界を超えた人的ネットワークと、そこから得られる情報が大きな財産になっていると鬼束氏は語る。
鬼束氏のケースを見ると、明確な目的意識に基づいて資格の取得に取り組み、業務そのものや自分自身のプロフェッショナル性を表す看板として役立てるとともに、社外の人脈形成にまで活かしていることがわかる。
資格の取得で最も大切なことは取った後、それをどう活かすかである。「とりあえずなんとかなるだろう」という発想は捨て、「その資格を使って何をするか?」という視点を持たねばならない。。※すべて雑誌掲載当時 (source:president2012.5)
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